宮澤俊昭:民法
MIYAZAWA Toshiaki : Civil Law

 

最近の研究テーマ Recent Research Field

 

団体訴訟制度/ 公法と私法の関係

Collective lawsuits / Relationship between private law and public law in civil law legal system

 

主な担当科目  Courses taught

 

民事法研究Ⅰ〜Ⅲ/ 民法特殊研究/ 演習など

研究内容  Areas of research interest

伝統的な民法学においては、私人にそれぞれ独占的に帰属する利益を対象とする権利を対象として議論が進められてきた。しかし現代社会においては、個別の私人への独占的な帰属は観念できないが、なんらかの形でその私人が享受しているという利益も存在している。例えば、ある地域で良好な景観が存在している場合、その景観を楽しむという利益は個々の住民の誰かが独占的に享受しているものではない。その利益は、他の住民とともに、その私人が享受しているものと理解しうる。
このような利益は、従来は行政法を中心とした公法によって規律されるものとされてきた。しかし、現在では、この利益については、民法の規律の対象にも含まれるとされている。つまり、ここに公法と私法が重なる領域が生じる。
現在は、この公法と私法の重なる領域において、民法と行政法、あるいは民法と憲法がどのように関わっていくのか、という問題を研究している。

 

授業内容

民法は、社会における基礎となる秩序を形成するとともに、私人間の紛争を解決するための基本的・具体的な基準を提供している。そのため、社会における多くの法的問題を理解するためには、その基礎として、民法をきちんと理解している必要がある。
以上のような民法の性質から、民法そのものの研究を深めたいという学生だけでなく、他の法領域(商法・会社法、租税法、知的財産法、労働法、経済法、社会保障法など)の研究のための基礎を身に付けるために民法の科目を履修する学生もいる。そのため、特に民事法研究Ⅰにおいては、受講生の要望に応じ、基本的な教科書を通読することで、民法全体の基本的な体系的理解を身に付けるための内容とする場合もある。
民法そのものの研究を深めたいという学生に対しては、その理解度に応じて基礎から発展的内容まで含めて、学生の関心に応じ、かつ最新の判例・学説の研究に対応した授業内容を設定する。特に研究者志望の博士課程前期・博士課程後期の学生に対しては、比較法研究も含めた指導を行う。

 

教員からのメッセージ

国際経済法学専攻を目指す方へ

社会における諸問題を解決する、という目的を持って研究を行う場合、それがどのような問題かを分析したうえで、解決のための基準を設定し、その基準に沿った解決策を提示し、その解決策を実現することが必要になる。多くの社会科学がこの営みを行うなかで、法学は、他の社会科学の分野とは少し異なることを行っている。他の多くの社会科学は、問題の分析、基準の設定、そして、その基準に沿った解決策を提示することを目的としている。
これに対して、法学が行っていることは、数千年前から少しづつ修正を積み重ねてきた法体系を基礎にして、他の学問領域において提示されている基準・解決策の相互の関係を調整し、現実に適用していくことである。
異なる学問分野から、異なる基準・解決策が提示されることは稀ではない。その相互の調整は必須のこととなる。しかし、これは、それぞれの学問分野内部で行われることを期待することは難しい。法学は、この役割を担っている。
さらに、現在の日本をはじめとする立憲主義国家においては、暴力としての強制力は国家が独占している。自由な社会を維持するためには、その強制力を適切に制御しなければならない。これも、社会における諸問題に対する解決策を現実に適用する法学が担う重要な役割である。
本学で研究を進めることで、一見すると地味で細かくみえるかもしれない法学の様々な議論に、このような重要な意義があることを感じてもらえるはずである。

 

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