特別企画:学生×修了生座談会

仕事に即活かせる実務的な科目、異分野を横断できる履修科目も充実

川端:実際に大学院で勉強された印象をうかがいましょうか。履修科目についてはいかがでしたか?

阿部:私は、政治・行政に関する授業を中心に受けようと思っていました。でも、政治・行政の問題をきちんと理解するためには、法律の知識も欠かせません。YNUの大学院のカリキュラムは、政治・行政と法律、それぞれの分野をバランスよく受けられるようになっていると思います。

川端:法律関係の科目では、何を履修していますか?

阿部:現在1年生の春学期ですが、社会保障法を履修しています。

川端:それはご自身の学びたい研究テーマと関わりがあるの?

阿部:そうです。先ほど述べたように、以前から「社会的不平等」というテーマに興味をもっていたので、そうした領域についても大学院におけるメインの研究と合わせ、より専門的に学びたいと考え、社会保障法を履修しています。

川端:なるほど。大局的には比較公共政策の視点からの分析でも、実際の現象を把握するには、ミクロ的に法制度に近寄ってみないとわからない、ということですね。上野さん、掛江さんはどうですか?

上野:租税法の科目が多くあったので、おもにその中から履修しました。それ以外では、租税法の理解の前提となっている民法、商法・会社法、行政法、民事訴訟法などのオーソドックスな実定法の科目を履修しました。これらの科目は租税法の法的理解のためには不可欠で、他には、仕事をしながら大学院に通っていたこともあり、夏休みに開講された短期集中の実務的な講座を履修しました。NPO法や消費者法など、非常に実務色の強い科目がたくさんあり、仕事にも直結する面もあるかとと思い、選びました。

掛江:私は外国語学部出身なので、上野さんと同じように、刑法や行政法などのオーソドックスな実定法科目を履修することができたのは、法学を理解することができるという点で非常によかったです。国際開発系の授業もたくさん履修することができ、池田先生や小池先生のゼミの人たちと一緒に勉強する機会があり、そのときの学びは今の研究や講義につながっています。国際開発と法学の視点、両方を学べる大学院だと思います。

国立の大学院ならではの協定で他大学の図書館でも資料収集が可能

川端:現役生の阿部さんは、今どういう学生生活を送っているのですか? 実際の授業風景や、授業の準備などについて教えてください。

阿部:学部のときよりも実践的な授業が多いと思います。たとえば、社会保障法の授業の中では、模擬裁判を行います。学生の中から、原告、被告、裁判官役を決めて、テーマについて何回も議論を行い、最終的に判決を起案します。そのためには法律の専門知識が必要なので、毎回授業の前に集まって準備をしています。他の科目でも、予習というか、準備は必ず必要ですね。

川端:他の授業では、具体的にどんなことをやっているのですか?

阿部:行政学の授業では、それぞれの学生が興味をもっていることについて調べ、発表します。自分で作成したパワーポイントを使って発表を行い、その後みんなでディスカッションをしています。著名な先生方の論文や研究書ももちろん調べて読みますが、それがそのままディスカッションで支持されるとは限らない。むしろ、教室でディスカッションすると、そのような方たちの議論の仕方を批判的に分析することもあります。そういう意味で、大学院での授業ではディスカッションが柱になっているのでしょうね。

川端:そういうときに、過去の論文や研究書、統計データなどが必要な場合があるでしょう?どういうところで、どうやって調べていますか?

阿部:参考文献については、大学の附属図書館法学資料室 や横浜市内外の各種の図書館で探しています。論文については、Ciniiというサイトで先行研究を調べています。資料を集めて、いくつかの論文を咀嚼して、全体を総合し、こういう問題状況じゃないか...とスライドにつくりあげていく。ここまでがプレゼンテーションの準備です。

上野:私も、とにかく調べた記憶があります。1回の授業が終わると翌週の授業に向けて調べごとばかりで、授業での発表が回ってきたりすると、てんてこ舞いでした。資料調査は、まず法学研究棟にある法学資料室に行って、先行研究、判例集などを片っ端から探しました。論文を書く際には、特に古い書籍や論文については学内だけでは資料収集ができずに、租税法の専門図書館(*)や東大の図書館に朝から行って、1日中資料を収集していました。

(*編集注:租税法の専門図書館とは、日本税務研究センター図書室(大崎)、租税資料館(中野)などのことです)。

掛江:国立大学の図書館協定というのがあるんですよね。

上野:そうです。それを利用しました。

川端:都内の私大の図書館も、本学附属図書館で紹介状を書いてもらえれば使えます。近隣の私大の図書館などにも行きましたか?

掛江:はい。図書館協定も積極的に活用しました。本学の学生証を提示すれば、他の国立大学の図書館、すべての神奈川県内の図書館を利用できます。

川端:なるほど。本学図書館・資料室だけではなく、他大学や公共図書館の資料も調査するのですね。われわれ教員と同じですね。
掛江さんは、授業についてはどうですか?

掛江:ランド先生の英語の授業がとても良かったです。ビジネス英語や、英語のシンポジウムでの司会のやり方とか、効果的にパワーポイントを使う英語のプレゼンテーションなどを学びました。それはいまだにすごく役に立っています。

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profile

上野 香

税理士 上野税理士事務所
(東京地方税理士会 戸塚支部所属)

横浜市立大学 商学部卒業
2010年 国際社会科学研究科
国際関係法専攻(現:国際経済法学専攻)
租税法務コース修了

阿部 仁彦

博士前期課程1年

2014年 横浜国立大学 教育人間科学部
国際共生社会課程卒業

Photo : 附属図書館

Photo : 附属図書館内部