特別企画:学生×修了生座談会

大学院生活のハイライト研究〜論文作成には、指導教官がていねいにサポート。

川端:1年生も秋の終わりから冬のはじめには修士論文の準備が始まります。自分の論文をまとめるプロセスで、悩んだこと面白かったことってありますか?

上野:指導していただいた先生の前で言うのも恥ずかしいのですが…。

川端:率直にどうぞ(笑)。

上野:私は、実務経験はあっても、学問的に何かを研究するということははじめてでした。資料収集の仕方から、分析、思考方法、まとめとしての文章(論文)作成に至るまで先生に教えていただきました。具体的には、図書館や資料室、データベースの使い方から始まり、文献を拾ってカードにし、社会の中に横たわる思想を把握し、その構造や方向性を見極めて事実を確定し、論文を組み立て、私見を述べる…という作業手順すべてです。2年生の1年間は、ひたすらその作業をやっていました。

掛江:私も指導教員である柳先生にとてもお世話になりました。「何を明らかにしたいのか」、「どんな論文が書きたいのか」から始まり、論文の構成について指導を受けました。さらには自分なりの意見や分析を書くということが、私にはとても苦しかった。自分のオリジナリティを出すのはとても勇気がいることです。ああでもない、こうでもない…と試行錯誤を繰り返し、その都度先生に意見をいただきました。何時間も議論を行い、具体的な参考文献などを紹介していただき、なんとか研究を完成させることができました。

上野:私は、研究の最終段階の論文作成時には年末年始もなく、大晦日まで先生と過ごしたような…親身になって、熱心に指導をしてくださいました。

掛江:私も大晦日に先生の家に行きました。論文の指導をしていただいて...感謝しています。

租税法の根本からひもとける力がつき現場での仕事力がアップ!

川端:修了生のおふたりには、今の職業について。そして大学院での経験が仕事にどう活かされているかを教えてください。

上野:修了後、すぐ税理士登録の申請をし、翌年には独立をしました。入学前の実務経験頼みの仕事の仕方では出なかった、まったく別の考え方ができるようになったと思います。
今までは実務書に事例を照らし合わせて、フローチャートに沿って処理をする…という表面的、機械的な仕事の仕方をしていました。それが大学院修了後は、制度の立法趣旨まで遡り、場合によっては裁判例をひも解き、考え方の根本や条文の構造を理解してから処理、判断をするようになりました。これはYNUの大学院で、租税法を根本から勉強した結果だと思っています。多少の不明点があっても、ここで身につけた資料収集のノウハウがあるので、つきつめて調べることは苦になりません。
また、川端ゼミは、OBや社会人でも勉強したい人に門戸を開いているので、多くの税理士や弁護士の先生方がOBでいらっしゃったり、研究会にいらっしゃる先生方と知り合うことができました。今でも、専門性の高い分野や、自分で解決できない問題があったら、その先生方にご意見をうかがうことがあります。とてもありがたいことだと思っています。

掛江:私は今研究者として仕事をさせていただいています。YNUで学んだことが今は生活の糧となっています。

川端:掛江さんが研究職としてスタートできたことに、大学院生活はどのように貢献しましたか?

掛江:たくさん論文を読んで悩みに悩んで、日本人、留学生、年配の先生、同級生など、いろんな人と議論できたのはいいことだったと思います。

川端:たとえば同じ学会の中でも、YNUの大学院で育ったからこういう色、キャラクターがもてたとか...。

掛江:国際法という学問の中で、国際協力という隣接分野がしっかり勉強できる大学院は他にないと思います。この部分は、切り分けられるものではないので、そういうところが勉強できたのはとてもよかったですね。指導教官の先生のご紹介で、他大学の学生がうちのゼミにきて、一緒に議論をしたこともあります。今もお互いの論文を推敲しあうなど、切磋琢磨していい関係を築いています。

川端:ゼミの中で、他大学の院生とジョイントで勉強会をやることなどもありますか?

阿部:8月に、YNUと提携しているマレーシア科学大学のシンポジウムに参加します。そのワークショップで、現地の学生とディスカッションをする予定です。

掛江:先生方が研究会を主催されていて、月に1回、学外の専門家の方たち(実務家やJICA、経産省の方々)と一緒に勉強会をしていました。とても勉強になりました。
また、フィリピンのサント・トマス大学と私たち大学院生がお互いの大学を訪問し合い、活発な議論をしたり、フィリピンにおける日本の開発援助の現場やフィリピンの貧困状況を視察するフィールドワークを行ったり。非常に勉強になりました。(*)

(*編集注:横浜国立大学は、2007年にフィリピンのサント・トマス大学と学術交流協定を締結しました。ここでの学生の相互訪問、フィールドワークはこの提携に基づく学術交流の一環として行われているもので、教員だけでなく大学院生の相互交流が大きな特徴となっています。

上野:川端先生が他大学でも教えていらっしゃるので、そこの院生と合同研究合宿を開催しています。それに加えて、昨年からは地元横浜の実務家との合同研究会を学外で開催し、青年税理士クラブという税理士の任意団体の実務家と現役生がお互いに研究報告をして実務と学問の世界のリンクがあるという話もうかがっています。先生の持論は、院生は学内に囲い込んでいてはいけない、社会との繋がりによって視野を広げよ、というものです。
また、希望すれば、国内外の学会(*)にも連れて行ってくださいました。外国の学会を院生が傍聴できて、教室で勉強していることと同じことが外国の学会でも議論されていて、この話このあいだのゼミで議論したなぁ、っていうようなことがありました。なので、勉強して自分を高めたい人はいくらでもできる環境。いろんな世界に足を踏み入れることができると思います。

(*編集注:欧州租税法学会〈European Association of Tax Law Professors〉や国際租税協会〈International Fiscal Association〉、租税法学会など)

川端:阿部さんは、将来どんな仕事に就きたいのですか?

阿部:自分の研究を直接活かせるところとして、行政官を考えています。でも、もう少し社会全体に影響を与えられるような仕事をしたいという気持ちもあり、シンクタンクや商社なども視野に入れています。ゼミで留学生と交流する中で語学力は最低限もっていなくてはいけないな…と痛感しているのですが、海外で働く場合も、ここで勉強した経験はきっと役に立つのではないかと思います。

ページの先頭へ

Photo : 大学エントランス

Photo : ゼミ風景

Photo : 学内風景