メッセージ

系長からのメッセージ

  

 われわれ横浜国立大学大学院国際社会科学府国際経済法学専攻は、1990年に設置された「国際経済法学研究科」にその源流を有します。そこでは、「開かれた大学院」と「紛争の事前回避とその合理的解決」という2つの理念が掲げられていました。
「開かれた大学院」とは、隣接学問、国際社会、そして実務に開かれた教育と研究を実施することを意味しています。また、「紛争の事前回避とその合理的解決」とは、法を事後的な紛争解決手段である裁判規範と してとらえた既存の法学教育・研究から転回し、法を事前の紛争回避手段として位置づけること、そして、社会において紛争や課題にリアルに直面する当事者の立場を念頭に置いた教育・研究を目的とするものです。
  2013年には、国際社会科学府(前期・後期:国際経済法学専攻および法曹実務専攻)と国際社会科学研究院からなる現在の体制と変わりましたが、これらの理念自体は30年の時を経てもなお受け継がれています。国際経済法学専攻の3つの特徴である「高度な実践性」「豊かな国際性」「共に磨きあえる開放性」 がこれを体現しているといえるでしょう。

 

 2020年、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の世界的流行により、われわれの社会は大きく変わってしまいました。パンデミックが終息したとしても、完全に元には戻らないかもしれません。しかし、重要なのは、時計の針を2020年以前に戻すことではなく、パンデミックの経験を踏まえて、われわれの社会を次のステージに推し進めることではないでしょうか。パンデミックに対して、科学技術の進歩は大きな力を発揮しました。今後も科学技術の進歩が社会に大きなインパクトを与えるという流れは続いていくことでしょう。そのような科学技術の進歩という大きな流れの中で、社会科学、特に、法学・政治学はどのような役割を果たすことができるのでしょう。これまでは、技術の進歩に対して、それをレギュレーションするのが法学・政治学の役割といわれてきました。しかし、最近は、新興科学技術がもたらす様々な社会的な課題を多角的に分析し、当該技術を実装した望ましい社会の実現に向けて責任ある研究・イノベーションを牽引する役割を担う学術的領域として、ELSI/RRI研究なども注目されてきています。

 

 法学・政治学を中心としつつ経済学・経営学等との学際領域の知見をも有し、科学技術の進歩のなかで、現実社会で日々起こる紛争や課題を、法学的・政治学的アプローチで、柔軟な思考で解決する人材の育成こそがわれわれの目指すところです。この不透明な状況の中で問題意識を有し、それを少しでも解決したいと考える皆さんを支え、共に学ぶことを期待しています。

 

法律系長 渡邉拓


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