横浜法学会 研究会成果報告

横浜法学会 平成26年度第7回研究会成果報告

下記の通り研究会を開催いたしました。

日時

2015年3月24日(火)15:00~16:30

場所
法学研究棟3階305会議室
(横国大HPアクセスガイドよりキャンパスマップN4-5参照)
講師

今村 与一 教授

(横浜国立大学大学院国際社会科学研究院)

題目

意思主義と不動産公示

 

 

第7回研究会「意思主義と不動産公示」の概要

 日本の物的担保法制においても母法の位置を占めるフランス法は、なぜ、抵当権設定契約を厳格な要式契約にしているのか。これに対し、日本法は、抵当権の設定を口頭でも可能な諾成主義に委ねているのか。そもそも「意思(諾成)主義」とは何か。
 ただし、母法では、意思主義(consensualisme)は、当事者の合意だけで契約が成立し、その効力が生じる諾成主義の意味を併有している。というのも、19世紀初頭に制定された民法典の体系上、物権と債権の区別が明瞭でなく、その当時、債権債務の発生とその帰結としての所有権移転が混然一体のものとして把握されていたからである。
ところが、日本の取引慣行では、不動産物権の中で最も現実支配(占有)から遠く、最も観念的な抵当権の存在を第三者に知らせ、しかも、抵当権者の優先権確保のために不可欠の登記が、無視しがたい頻度でなおざりにされるのはどうしてか。さらに、戦前以来、所有権の登記を回避しようとする傾向が根強いのは、いかなる事情によるものか。
これに対し、意思主義の母法、フランス法では、「形式主義(formalisme)」に由来する不動産公示をどのように扱っているか。
 この報告の目的は、意思主義と不動産公示の関係のあり方を探究するため、母法フランス法の実情と対比させながら、日本法固有の「対抗要件主義」の現状とその問題点を析出し、将来の方向性を見定めるうえで避けて通れない当面の課題を提起することであった。
 報告後の質疑応答では、「対抗要件主義」に依存しない公示原則の具体的な実現方法、物的担保法制に見られる公示原則の後退現象、「未登記抵当権」と呼ばれる登記留保の頻度、意思主義に関する民法176条と「対抗要件主義」に関する177条の関係を回復することの積極的根拠、数次にわたる相続登記の停滞を解消するための方策など、多岐にわたる論点について討論の機会を得ることができ、報告者にとってもたいへん有意義であった。もっとも、20年来の研究テーマをわずか1時間で要約することは至難の業であり、せっかく参加してもらった留学生のみなさんにとっては、きわめて難易度の高い内容であった。報告者自身、もう少し平易な説明を心がけるべきであったと反省している。

(今村与一)

お問い合わせ先

横浜法学会
〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-4 横浜国立大学大学院
国際社会科学研究院法学会事務局(法学研究棟3階 N4-5参照)
開室時間 月・木・金10:00~17:00 昼休み12:45~13:45
担当:中川 Tel/Fax 045(339)3632 E-mail: aiblawynu.ac.jp

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