横浜法学会 研究会成果報告

横浜法学会 平成29年度第3回研究会成果報告

下記の通り研究会を開催いたしました。

日時

2017年 8月 7日(月)13:00~16:00

場所
法学研究棟3階305号教室
(横国大HPアクセスガイドよりキャンパスマップN4-5参照)
講師
黄 智 恵(ファン ジヘ )氏 (韓国外国語大学講師)
題目

韓国における公共施設管理の民間委託

 

 平成29年度第3回「横浜法学会」研究会は、8月7日(月)13時から、韓国外国語大学の黄智恵(ファン・ジヘ)先生による「韓国における公共施設管理の民間委託」というテーマで開催されました。黄先生は、平成29年度横浜国立大学国際交流基金「外国人研究者招へい・職員の海外派遣事業」により、8月1日から10日までの日程で来日されており、静岡市の内部統制システムやPFI事業、指定管理者により運営されている海老名市立図書館、空港施設運営権(コンセッション方式)により民営化された仙台国際空港などを視察されました。その一環として、本研究会での報告をお願いした次第です。

 最初に、韓国におけるPFI(民間投資)法制と日本のPFI法制についての比較がなされた上で、両国とも民間事業者の利益ばかりが追求されて、公共性の確保がなおざりにされている状況にあること、そのために行政が民間事業者の任務遂行をいかに的確に監視・監督していくかという保障責任の視点が重要になっていることが指摘されました。

 その上で、保障責任を十分に果たすための方法として、①公益的事由がある場合には、国・地方公共団体に事業解約権を認めるという方法、②管理体系を整備する方法、③国家のみが事業を監視するのではなく、情報公開を活用して、私人を事業の監視に参加させる方法、④予想しなかった事由により施設利用者が被害を受けた場合に備えて、あらかじめ責任配分を整備しておくことが提示されました。

 当日は10人程度の参加者があり、内訳も、国際経済法学専攻の大学院生(中国からの留学生を含む。)、法科大学院生、経営学部生など、多彩でした。黄先生の美しい日本語による報告は論理的で非常に理解しやすく、終始なごやかな雰囲気の下で、参加者からも多様な視点から活発な質疑が投げかけられました。専門家の立場では、君塚正臣教授(憲法)からは、公共サービスを民間事業者が実施する場合における憲法的拘束について鋭い質問がなされ、小池治教授(行政学)からは、日本、とりわけ神奈川県内における公共施設の民間委託の問題点について実例の紹介が行われました。

 少子高齢化、経済の停滞、財政難は韓国でも喫緊の課題となっており、PPP/PFIの活用による行財政改革は、日本と韓国の両国が、それぞれの成功ないし失敗事例に学びつつ、経験を深めていかなければならない分野です。今回の研究会は、様々なバックグラウンドをもった参加者が、それぞれの問題意識を深める絶好の機会となったものと思います。報告者である黄先生をはじめ、参加者の皆様に心から感謝を申し上げます。

                                (板垣勝彦 国際社会科学研究院准教授)

 

お問い合わせ先

横浜法学会
〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-4 横浜国立大学大学院
国際社会科学研究院法学会事務局(法学研究棟3階 N4-5参照)
開室時間 月・木・金10:00~17:00 昼休み12:45~13:45
担当:中川 Tel/Fax 045(339)3632 E-mail: aiblawynu.ac.jp

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