横浜法学会 研究会成果報告

横浜法学会 2019年度第2回研究会成果報告

下記の通り研究会を開催いたしました。

日時

2019年11月22日(金)13:00~14:30

場所
法学研究棟3階305会議室
(横国大HPアクセスガイドよりキャンパスマップN4-5参照)
報告者
原 謙一 氏
(西南学院大学法学部法律学科准教授)
題目
仮想通貨(暗号資産)及びブロックチェーンの活用可能性について

 

 第2回研究会では、原謙一氏(西南学院大学准教授)が、「仮想通貨(暗号資産)及びブロックチェーンの活用可能性」と題して「暗号資産」の仕組みとその最新の動向を報告された。まず、「暗号資産」を実現するための3つの技術(①公開鍵暗号技術、②P2P通信技術、③ブロック化技術)について図解入りのわかりやすい解説があり、そのうえで金融商品化した決済手段という意味での「暗号資産」(ペイメント・トークン)の取引に焦点を当てつつ、種々の問題点が検討の俎上に載せられた。何より、「暗号資産」の権利性を認めるか否かをめぐっては、大きな見解の対立が見られ、仮にその権利性を認めるにしても、「通貨類似の取扱をすることを求める債権」と解する裁判例(東京地判平成30年1月31日判時2387号108頁)や、民法上の「物」・「金銭」・「通貨」に関する規定を類推する立場、その他の「財産権」と見る立場など、その法的構成をめぐって議論は分かれている。資金決済法による公法的規制が緒に就いたとはいえ、私法上の概念構成については未解明の状態であることが、改めて浮き彫りにされた。報告者からは、絶えざる技術革新に法的対応が追いついていない現状が指摘され、最後に、いずれ「暗号資産」が潰える時が来るとすれば、新たな技術に踊らされることがないよう、慎重な姿勢で臨む必要があると結論づけられたところは、学問的良心を感得させる一場面でもあった。

 その後の討論では、民事法、知的財産法、刑事法など参加者各人の観点から、興味深い意見交換が続いた。本学大学院博士課程修了生でもある報告者自身は、無体財産の担保化を学位論文の主題として取り上げて以来、「暗号資産」にも関心を寄せるようになったとのことだが(既発表論文として、「仮想通貨(暗号資産)の法的性質決定及び法的処遇―ビットコインを中心として―」横浜法学27巻2号79頁以下)、いまだ日の浅い研究成果に対する率直な疑問ないし意見も、彼にとっては一層の研究の進捗を促す励ましのように響いていた。 

(今村与一 国際社会科学研究院教授)

 

お問い合わせ先

横浜法学会
〒240-8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台79-4 横浜国立大学大学院
国際社会科学研究院法学会事務局(法学研究棟4階 N4-5参照)
開室時間 月・木・金10:00~17:00 昼休み12:45~13:45
担当:中川 Tel/Fax 045(339)3632 E-mail: aiblawynu.ac.jp

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